イヤイヤ期、叱っても響かないのはなぜ?アドラー心理学と保育士が考える「叱らない」対応

子育てヒント

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「もう、どうすればいいの…」と天井を見上げた夜に

朝の着替えで「イヤ!」。ごはんを出せば「これイヤ!」。お風呂に誘えば全力で逃走。やっとの思いで寝かしつけたあと、散らかったリビングでぼんやり天井を見上げる——。

イヤイヤ期の毎日、本当にお疲れさまです。「うちの子、私の育て方のせいでこうなのかな」と自分を責めてしまう方もいるかもしれません。でも、最初にお伝えしたいことがあります。イヤイヤ期は、育て方のせいで起こるものではありません。むしろ、お子さんが順調に育っている証拠です。

悩んでいるのも、あなただけではありません。文部科学省のデータでは、「子どもが言うことを聞かない」ことを負担に感じている親は、2歳児で約22%、3歳児では約27%にのぼるそうです。4人に1人前後。それだけ多くの家庭が、同じ「イヤ!」と毎日格闘しているということです。

私は保育士として、これまで数えきれないほどのイヤイヤと付き合ってきました(笑)。今日はその現場経験と、子育て心理学として人気のアドラー心理学の考え方を重ねながら、「叱らなくても大丈夫」と思える理由をお伝えしたいと思います。

そもそも、イヤイヤ期はなぜ起こるの?

イヤイヤ期は、一般的に1歳半ごろから始まり、2歳前後にピークを迎えます。この時期、子どもの中では「自分」という意識が芽生えて、「自分でやりたい」「自分で決めたい」という気持ちがぐんぐん育っています。

ところが、やりたい気持ちに対して、できることも、伝えられる言葉も、まだ全然追いついていません。「本当は靴を自分で履きたかったのに、ママが履かせちゃった」——そんな気持ちを説明する語彙がないから、出てくる言葉は「イヤ!」の一択になるわけです。

さらに、感情にブレーキをかける脳の部分(前頭前野)は、この時期まだまだ発達の途中です。つまり、イヤイヤは「わがまま」ではなく、気持ちのコントロール装置が工事中なだけ。海外ではこの時期を「独立期」と呼ぶこともあるそうで、私はこの呼び方、とても好きです。

保育士として感じる、「叱る」が効かない理由

現場でいろいろな子を見てきて、はっきり感じることがあります。イヤイヤの真っ最中に叱っても、まず響きません。

理由はシンプルで、イヤイヤ中の子どもは感情が爆発している状態だからです。大人でも、カッとなっている最中に正論を言われたら、余計にイライラしませんか?あれと同じことが、もっと小さな心の中で起きています。

しかも、激しく反応すればするほど、子どもは「イヤイヤすると大人がかまってくれる」と学習してしまうことがあります。叱っているつもりが、実はイヤイヤを育てていた…ということも起こりうるわけです。(これ、現場でも本当によくあります)

だから、保育の現場では「叱って止める」より、まず気持ちを受け止めて、落ち着くのを待ちます。そのうえで、どうするかを一緒に考える。遠回りに見えて、これがいちばんの近道です。

アドラー心理学では、こう考えます

ここで、子育て本でも人気のアドラー心理学の視点を紹介させてください。イヤイヤ期にそのまま使える考え方が、2つあります。

1つ目は、「どうして?」ではなく「どうしたいの?」と問いかけること。

アドラー心理学には「目的論」という考え方があります。人の行動を「なぜそうなったか(原因)」ではなく「何がしたいのか(目的)」から見る、という視点です。泣いている子に「どうして泣くの!」と原因を聞いても、答えは返ってきません。でも「どうしたかったの?」と目的を聞くと、「じゃあ、どうしようか」と一緒に考える入り口ができます。

2つ目は、「課題の分離」という考え方。

たとえば、お店で駄々をこねられて焦るとき。「周りに迷惑をかけたくない」「ちゃんとしつけていると思われたい」——それは実は、子どもの課題ではなく親側の課題だ、とアドラー心理学では整理します。こう聞くと突き放しているようですが、逆です。「私が焦っているのは、私の事情なんだ」と気づけると、不思議と子どもへのイライラが一段軽くなります。焦りと、子どもの気持ちを、分けて見られるようになるからです。

保育士としての現場感覚から言っても、この2つは理にかなっていると感じます。私たちが現場でやっている「気持ちを受け止めて、どうしたいかを聞く」は、まさに目的論そのものだからです。

もっとアドラー心理学のことを知りたくなった方には、ベストセラー『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健/ダイヤモンド社)がおすすめです。哲人と青年の対話形式で読みやすく、子育てだけでなく人間関係全般のヒントにもなります。

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場面別・保育士とアドラー式のいいとこどり声かけ

では、実際にどう声をかけるか。イヤイヤが起こりやすい場面別に、現場でよく使う形をご紹介します。

  • 朝の着替えで「イヤ!」:「着替えなさい!」ではなく「今日は赤の服と青の服、どっちにする?」。自分で決めたい気持ちを満たす、定番だけど効果的な方法です。
  • 食卓で「これイヤ!」:「食べなさい」と押すより、「そっか、今日はこれの気分じゃないのね」といったん受け止める。それだけで意地の張り合いが減ります。無理に完食させなくて大丈夫です。
  • お店で駄々こね:まず「欲しかったんだね」と気持ちだけ受け止める(買わなくていいんです)。そして「今日は買わないよ。抱っこで行く?歩いて行く?」と、次の行動の選択肢を渡す。
  • お風呂に全力拒否:「お風呂イヤなんだね。じゃあ、アヒルさんと入る?ジョウロと入る?」。イヤの否定ではなく、その先の楽しみに目を向けさせる形です。

共通しているのは、気持ちは全部受け止める、でも行動には枠があるということ。何でも言いなりになるのとは違います。危ないこと、人を傷つけることは「ダメ」と短く伝えてOK。そのうえで、それ以外の部分では子どもに選ばせる。この線引きが、親も子も楽になるバランスだと感じています。

「もっと具体的に、子育ての場面でどう考えればいいか知りたい」という方には、こちらの2冊も参考になります。

それでも無理な日は、あっていい

最後に、これだけは言わせてください。

ここまで書いておいてなんですが(笑)、毎回こんなふうに対応できなくて当たり前です。私も現場で、深呼吸してから子どもに向き合う日がたくさんありました。イライラしたら、安全を確保したうえで少し距離を取る。それも立派な対応の一つです。

アドラー心理学には「不完全である勇気」という言葉があります。完璧な親である必要はなくて、うまくいかない自分ごと受け入れて、また明日やってみればいい。イヤイヤ期は必ず終わります。そして終わってみれば、「イヤ!」と言えたことが、あの子の自立の第一歩だったと気づくはずです。

今日も「イヤ!」に付き合っているあなたは、それだけで十分頑張っています。どうか自分にも、勇気づけの言葉をかけてあげてくださいね🍀

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